電圧レギュレータの基礎知識(2/4)

CMOSリニアレギュレータの主な特性

リニアレギュレータの基本性能は、出力電圧精度、消費電流、入力安定度、負荷安定度、入出力電位差、出力電圧温度特性などが挙げられます。これらはシリーズレギュレータとしての本質的な特性であるため、CMOSリニアレギュレータだからといってバイポーラリニアレギュレータと比較して大きく犠牲になっている項目はありません。

リニアレギュレータの基本的な特性

表2にCMOSレギュレータの一般的な電気的特性を示します。

(表2)各種CMOSレギュレータの一般的な特性例
特性 低消費電流 高耐圧 超高速 GO Nch出力 大電流 単位
XC6504 XC6216 XC6223 XC6220 XC6602 XC6230
入力電圧範囲 1.4~6 2~28 1.6~5.5 1.6~6 0.5~3 1.7~6 V
出力電圧範囲 1.1~5.0 2.0~23 2.0~4.0 0.8~5 0.5~1.8 1.2~5 V
出力電圧精度 ±1 ±1 ±1 ±1 ±20mV ±1 %
最大出力電流 150 150 300 1000 1000 2000 mA
入出力電位差 330@0.1 300@0.02 270@0.3 60@0.3 15@0.1 170@1 mV@A
消費電流 0.6 5 100 8 ⇔ 50
切り替え
6.5(IIN)
100(IBIAS)
45 μA
CE端子 あり あり / なし あり あり あり あり
入力安定度 0.01 0.01 0.02 0.01 0.01 0.01 %/V
出力電圧温度特性 50 100 100 100 30 100 ppm/°C
リップル除去率 30 30 80 55 75VIN)
60(VBIAS)
70 dB

各値は代表的なTYP.値を記載

レギュレータの耐圧

    

電源用のリニアレギュレータでは、バッテリーやACアダプターに直接繋がることが前提になりますので入力電源耐圧には注意が必要です。特にCMOSプロセスでは、入力電源耐圧によりICのデザインルールが異なっており入力電源耐圧と微細技術とは相反する関係になっていますので、大は小を兼ねるというように高い入力電源耐圧のものを選ぶと、ICのサイズが大きくなったり性能が低下したりしますし、小さいものを選ぶと入力電源耐圧に注意が必要になってきます。

CMOSリニアレギュレータでは、用途に応じて適切なものを選べるように様々な入力電源耐圧のICが用意されていますので、使用する機器の電源の種類と必要とする性能を考慮し選ぶようにしましょう。(表3)

(表3)動作電圧毎の製品分類‐3端子レギュレータ
動作電圧範囲 シリーズ名 パッケージ
USP-3 SOT-23 SOT-89 SOT-223 TO-252
1.5V ~ 6V XC6218        
1.8V~6V XC6206      
2V ~ 10V XC6201        
2V ~ 20V XC6202    
2V~28V XC6216    

リップル除去率

CMOSリニアレギュレータは用途ごとに見ると様々なものがありますが、性能で大別すると低消費電流を重視したレギュレータと過渡応答特性を重視した高速LDOとに分けることができます。これらの違いは入力電圧や出力電流の変化に対する追従性の違いであるため、一般的なDC特性だけでは表しにくくなり、そのため最近ではCMOSリニアレギュレータの基本性能を現すのにリップル除去率も含まれるようにもなってきました。 リップル除去率は下記の式で表されます。

リップル除去率=20×Log(入力電圧変化/出力電圧変化)

図5に高速レギュレータ XC6223シリーズのリップル除去特性を示します。また、図6に実際の波形を示します。入力電圧には、ピーク・ピークが1Vのサイン波を使用し、周波数を変化させ出力電圧にのるリップルの値を読みます。

(図5)リップル除去率特性(XC6223)

XC6223x181

(図6)リップル除去率特性の実際の入力電圧と出力電圧波形(IOUT=30mA)

入力リップル周波数:1KHz

入力リップル周波数:100KHz

図5より1kHz時のリップル除去率は78dBですので入力電圧の変化が1Vに対し、出力電圧は0.1mV程度になり図6のオシロスコープでは確認できませんが、100kHzでは40dB程度ですので出力リップルは数mVとなりオシロスコープでも確認できます。

入出力電位差

次にリニアレギュレータとしての基本性能を表す一つに入出力電位差がありますが、特にCMOSリニアレギュレータでは、入出力電位差が非常に小さいLDOタイプのものが殆どです。これは電池をギリギリまで使用することを目的に作られてきた点からの特徴でしょう。図7に入力電圧と出力電圧の関係を示します。入出力電位差が非常に小さいことがわかります。

(図7)入力電圧と出力電圧の関係(XC6209B302:出力電流=30mA)

また、入出力電位差は文字通り入力電圧と出力電圧の電圧差を表しますが、「入力電圧と出力電圧の電圧差がこれだけあれば電流がこれだけ取り出すことができます。」ということを示しているものです。参考に XC6222x281の入出力電位差特性例を図8に示します。例えば、出力電圧が2.8Vに設定されているレギュレータで600mAの出力電流を得るためには、入出力電位差が300mV必要、すなわち3.1Vの入力電圧が必要なわけです。

(図8)入出力電位差特性例(XC6222x281)

XC6222x281

最近のLDOではPch MOSドライバの駆動性能が向上しているので、ある程度以上の入出力電位差があれば、ほとんどドロップアウトすることなしに電流制限まで出力電流をとることができるようです。

過渡応答特性

過渡応答特性とは、入力電圧や負荷電流がステップ状に変化したときの追従性のことを言います。
電子機器のデジタル信号処理にバーストモードが採用されるようになり、LSIやメモリーICの負荷電流の変化が大きくなってきています。そのためレギュレータにもその変化に追従できる過渡応答特性が追及されるようになってきました。
過渡応答特性には入力過渡応答特性と負荷過渡応答特性がありますが、リニアレギュレータの過渡応答特性は回路の消費電流に依存します。
基本的な内部回路ブロック図(図9)に示してある誤差増幅器と出力用Pch MOSトランジスタのゲート容量に着目します。CMOSリニアレギュレータでは、出力用に大きなPch MOSトランジスタが入っていますので、このPch MOSトランジスタをドライブするための誤差増幅器の出力インピーダンスとMOSトランジスタゲート容量で応答スピードはほぼ決まります。この誤差増幅器の出力インピーダンスを決めるのが回路の消費電流であり、消費電流が大きいものほど低インピーダンスとなり高速に応答します。

(図9)高速タイプの基本構成ブロックダイアグラム

高速タイプのものではバッファー段を挿入してドライブ能力を上げていますが、このバッファー段が増幅器の役割にもなり、初段(誤差増幅器:40dB)+バッファー段(20dB)+出力段(Pch MOSトランジスタ:20dB)の三段増幅となります。そのため高速タイプのものは、オープンループゲインで80dB以上の感度を持った帰還系が形成され、出力電圧の変化に対し敏感かつ高速に反応できるようになっています。
実際に高速タイプの負荷過渡時の波形を図10により観察して見ると、負荷電流の変化による出力電圧の変化に対し数µ秒で電圧へのリカバーが始まっていることがわかります。

(図10)高速LDOの負荷過渡応答波形(XC6223x251)

XC6223x251

また負荷過渡応答は日々改善されています。図11に高速タイプの XC6221と低消費電流タイプの XC6219の負荷過渡応答特性を比較してみます。 XC6219のドロップ量220mV程度に対し、 XC6221のドロップ量は120mVと、約50パーセント程度改善されていることがわかります。どちらもSOT-25パッケージに入るサイズのICですので、Pch MOSトランジスタの大きさはそれほど変わりませんが、明らかに波形が異なることが見て取れます。

(図11)負荷過渡応答特性の比較

XC6221A282

XC6219A282

VIN=3.8V
Cin=1µF Ceramic Cap.
CL=1µF Ceramic Cap.

CMOSプロセスで使われるシリコン基盤には、P型とN型の2種類があります。
一般的にP型シリコン基板の方が入力過渡応答時やリップル除去率の特性をよくすることができます。これはP型シリコン基板ではシリコン基板がVSSに接地されており、シリコン基板上に形成される回路が入力電源からの影響を受けにくい構造になるからです。図12にP型シリコン上に形成されたインバータ回路を示します。特にIC内部の基準電源などは、この構造上の特性を利用して外部からのノイズの影響を受けにくいように作られている場合があります。
現在では、ほとんどの場合P型シリコン基盤が利用されています。

(図12)P型シリコン上に形成されたインパータ

最近のLDOでは非常に高速過渡応答になっており負荷過渡変動に対して追従性は良いのですが、早く反応しすぎるために電源ラインにコネクター接続部や配線引き回しによるインピーダンスが入ってしまっている場合などでは、電源ラインが揺らされてしまい高速レギュレータの性能を引き出せないばかりか、他のリニアレギュレータの出力にも影響を与える場合があります。電源ラインにインピーダンスが入らないように基板上での配線の引き回しには十分注意しましょう。

出力ノイズ特性

出力電圧のノイズには、IC内部の出力電圧プリセット用の抵抗で発生した熱雑音が誤差増幅器で増幅されて出力されるホワイトノイズがあります。熱雑音は(IC内部の出力電圧プリセット用の)インピーダンスが高い場合大きくなりやすいので、(IC内部の)消費電流を70µAにした超高速/低雑音のCMOSレギュレータもあります。そのノイズ特性を図13に示します。

(図13)出力ノイズ特性例(XC6204B302)

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