DC/DCコンバータ回路設計ガイド(1/10)

DC/DCコンバータとは

この資料は、DC/DCコンバータ回路設計するためのヒントを提供するものです。様々な制約条件下で最も要求仕様に近いDC/DCコンバータ回路を設計するために何をどうすれば良いか、できる限り具体例を用いて説明しています。

DC/DCコンバータ回路の諸特性(効率、リップル、負荷過渡応答等)は、外付部品の変更により変更することが可能ですが、最適な外付部品は使用条件(入出力仕様)により異なるのが一般的です。

例えば「効率を上げるにはどうすれば良いか?」と質問したとしても、「使用条件により異なります」とか「ケース・バイ・ケースですね」と答えられて、はぐらかされたような気持ちになった経験もあるかと思います。

では、なぜこのような回答をされるのか。その理由は、電源回路は市販される商品の回路の一部として使用されることが多いため、大きさ、コスト等の制約と電気的な要求仕様を両立する設計をしなければならないからです。

通常、カタログの標準回路は、標準的な使用条件においてまずまずの特性を発揮できるような部品選定になっていることが多いです。

従って、必ずしも個々の使用条件において最適な部品選定とは言えません。そこで、個別の設計においては、それぞれの要求仕様(効率、コスト、実装スペース等)に応じて標準回路から設計変更する必要が生じます。

しかしながら、要求仕様を実現できる回路を設計できるようになるには、かなりの知識と経験が必要です。そこで、この資料では、それらの知識と経験がなくても、どの部品をどう変えたらうまく動作するのか、具体的な数値を用いて説明しています。したがって、複雑な回路計算することなく、DC/DCコンバータ回路を素早く正常動作することができます。

DC/DCコンバータの種類と特徴

主なDC/DCコンバータ回路は、その回路方式により以下のようなものがあげられます。表1に各方式の特長を示しました。

  1. 非絶縁型
    • 基本(1コイル)型
    • 容量結合型2コイル(SEPIC、Zeta、…)
    • チャージポンプ(スイッチトキャパシタ/コイルレス)型
  2. 絶縁型
    • トランス結合型(フォワード)
    • トランス結合型(フライバック)
(表1)DC/DCコンバータ各回路方式の特長
回路方式 部品点数
(実装面積)
コスト 出力電力 リップル
非絶縁型 基本型 安価
SEPIC、Zeta 中程度 中程度 中程度 中程度
チャージポンプ 中程度 中程度
絶縁型 フォワードトランス 高価 中程度
フライバックトランス 中程度 中程度 中程度

基本型とは回路を昇圧のみ又は降圧のみに動作を限定することにより、部品点数を最小限にしたもので、入力側と出力側は電気的に絶縁されていないタイプのものです。図1に昇圧回路、図2に降圧回路を示しました。これらの回路は小型、安価、リップルが小さい等の利点を持っており、機器の小型化に伴い、需要が増えています。

(図1)昇圧型

(図2)降圧型

SEPIC、Zetaはそれぞれ、基本型の昇圧回路、降圧回路のVIN-VOUT間にコンデンサを挿入し、コイルをさらに1個追加した形です。また、それぞれ昇圧DC/DCコントローラIC、降圧DC/DCコントローラICを使用することにより、昇降圧DC/DCコンバータを構成可能です。ただし、これら回路方式での使用を想定していないDC/DCコントローラICもありますので、採用には注意が必要です。これら容量結合2コイル型には、VIN-VOUT間を絶縁できるメリットがありますが、コイルとコンデンサが増加することにより、効率は低くなります。特に降圧時にも効率低下が大きくなり、通常70%~80%程度の効率となります。
チャージポンプ型はコイルを必要としないため、実装面積、実装高さとも小さくできるというメリットがある反面、幅広い出力電圧や大電流に対して効率が良いものを作りにくいため、ホワイトLED駆動用やLCD用電源等に用途が限定されています。
絶縁型のものは1次電源(主電源)とも呼ばれ、主として商用電源(AC100V~240V)からDC電源を作るAC/DCコンバータや、ノイズ除去等の理由により入力側と出力側を絶縁する必要がある場合等に広く使用されています。これらは、トランスを使用して入力側と出力側を分離しているため、昇圧/降圧/反転等の制御をトランスの巻数比とダイオードの極性を変更することにより、構成可能です。従って、1つの電源回路から多数の電源を取り出すことができます。特にフライバックトランスを使用したものは、比較的部品点数が少なく構成できるため、2次電源(ローカル電源)回路としても使用される場合があります。ただし、フライバックトランスはコアの磁気飽和防止用の空隙を必要とするため、外形サイズが大きくなります。また、フォワードトランスは大電力を取り出しやすいですが、1次側にコアの磁化防止用のリセット回路が必要になり、部品点数が増加します。コントローラICも入力側と出力側のGNDを分離したものが必要となります。

DC/DCコンバータの基本動作原理

最も基本的なDC/DCコンバータ回路の昇圧と降圧の動作原理を説明します。他の回路方式もコイルを使用するものは、昇圧回路と降圧回路の組合せ又は応用回路とも見ることもできます。
図3、図4は昇圧回路の動作を説明したものです。図3はFETがONした時の電流経路を示しています。破線はわずかな漏れ電流ですが、軽負荷の効率を悪化させます。FETのONしている時間にLに電流エネルギーを蓄えます。図4はFETがOFFした時の電流経路です。FETがOFFしてもLは直前の電流値をキープしようと働き、コイルの左端は強制的にVINに固定されるので、VOUTに電圧を継ぎ足すように電力を供給して昇圧動作をします。よって、FETのON時間が長く、Lに蓄えた電流エネルギーが大きいほど、大電力を取り出すことができます。しかし、あまりにFETのON時間を長くすると、出力側に電力を供給する時間がごくわずかとなり、FETがONしている時の損失も増大して変換効率が悪化します。したがって、通常は適切なON/OFF時間の比(デューティ)を超えないよう、デューティの最大値を制限しています。 昇圧動作は図3、図4の状態を繰り返します。

(図3)昇圧回路でFETがONした時の電流経路

(図4)昇圧回路FETがOFFした時の電流経路

図5、図6は降圧回路の動作を説明したものです。図5はFETがONした時の電流経路を示しています。破線はわずかな漏れ電流ですが、軽負荷時の効率を悪化させます。FETのONしている時間にLに電流エネルギーを蓄えるとともに出力に電力を供給します。図6はFETがOFFした時の電流経路です。FETがOFFしてもLは直前の電流値をキープしようと働き、SBDをONさせます。このとき、コイルの左端は強制的に0V以下にされるため、VOUTの電圧は低下します。よって、FETのON時間が長く、Lに蓄えた電流エネルギーが大きいほど大電力を取り出すことができます。降圧の場合は、FETがONしている時も出力に電力を供給できるため、デューティの最大値を制限する必要がありません。よって、入力電圧が出力電圧を下回る場合、FETは常時ON状態となりますが昇圧動作はできないため、出力電圧も入力電圧以下に低下します。
降圧動作は図5と図6の状態を繰り返します。

(図5)降圧回路でFETがONした時の電流経路

(図6)降圧回路でFETがOFFした時の電流経路

DC/DCコンバータ回路設計のポイント

DC/DCコンバータ回路の要求仕様のうち重視される項目は、

  1. 安定動作すること(=異常発振等の誤動作や焼損や過電圧により破壊しないこと)
  2. 効率が大きいこと
  3. 出力リップルが小さいこと
  4. 負荷過渡応答が良いこと

があげられます。これらは、DC/DCコンバータICおよび外付部品を変更することにより、ある程度改善可能です。これら4項目の重み付けは、個別のアプリケーションにより変わりますが、各部品の選定という観点から4項目を改善するにはどうすれば良いかを中心に考えて見ましょう。

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