LED照明コントローラー XC9401設計ガイド(6/9)

6.非絶縁型回路 部品選定方法

非絶縁型回路の外付け部品の選定方法について、図23に示す100VACでのXC9401シリーズCタイプを用いた非絶縁型回路を例に説明します。

(図23)100VAC非絶縁降圧、Cタイプ 代表回路例

6-1.LED直列数

まず、本アプリケーションでのLED直列数の選定基準について説明します。

LEDを効率よく点灯させるには、LED接続方法や個数、LED電流が重要な要素になります。LEDの出力電力を一定とした時のLED直列数とLED電流の一般的な関係を図24に示します。

LED直列数を増やすことでLED電流が低減している事が分かります。非絶縁型回路においてはLED電流が低減すると、電源回路における周辺部品での損失が低減され効率改善や小型部品の選択ができ、実装面積削減やコスト削減が可能になります。
実際には、LED直列数を最適な値に選定することで、LEDと周辺部品のトータルコストを抑えることが可能です。

(図24)出力電力を一定とした時のLED直列数とLED電流の関係

また非絶縁型回路においては、入力電圧が大きく、LED電圧が小さい場合、オンタイムが最小オンタイムtONMINより短くなる場合があります。オンタイムが最小オンタイムより短くなると、LED電流の制御ができず設定値以上のLED電流となります。

このため、オンタイムが最小オンタイムより短くならないため、式(6)を満たすLED電圧を選定してください。

tONMIN 最小オンタイム
VLED LED電圧
VF フライホイール・ダイオードの順方向電圧
Vrms_max 入力電圧の上限値(実効値)
tOFF オフタイム 6.0µs(typ.)

今回の例では、LED直列数を20直、LED電流150mAを設定値として外付け部品の選定を進めていきます。

6-2.ブリッジダイオード(BR)

AC入力を全波整流するためのブリッジダイオードです。
ブリッジダイオードの尖頭逆電圧および平均整流電流が入力電圧・電流に対し十分余裕のあるものを選定してください。

今回の例では、入力電流のピーク値が約500mA、ブリッジダイオードに印加される最大電圧は約282Vとなるため、定格電流1A、定格電圧400Vの製品を選定しています。

6-3.入力フィルタ(L1,C1,C2)

C1、L1はAC入力からのノイズおよびAC入力へ帰還するノイズを低減するためのフィルタ回路です。代表回路例(図23)ではスイッチング周波数(50kHz~150kHz)以上のノイズ除去のため、20kHz以上のノイズを減衰させるようフィルタを構成しております。C1については、AC入力からのラッシュ電流を抑制するため容量値を小さくする必要があり、0.1µFを目安に容量値を選定してください。

実際には対象となる規制、規格に対応できるよう入力フィルタの定数調整およびフィルタ回路の調整を行う必要があります。

全波整流された電圧をC2にて平滑し、そのC2の容量値を大きくすることで、LEDのちらつきを防止しています。この全波整流後、平滑された電圧VrecがLED電圧より低くなると、スイッチングが停止しLED電流が低下していきます(図25)。スイッチング停止時間が長ければLED電流が低下していき、LED電流ピーク値の5%より低くなると、ちらつきが発生します。(ちらつきの定義はPSEの定義を使用)

ちらつきを防止するためには、式(7)を満たすようにLED電圧およびC2容量値を選定する必要があります。但し、容量値を大きくするにつれ、力率が低下していきますので注意してください。

(図25)ちらつき発生時の各種電圧、電流波形

PIN 入力電力
f 商用電源周波数 50Hz / 60Hz
Vrms_min 入力電圧の下限値(実効値)

以下に計算例を示します。
VLED =60V, ILED=0.11A, f=50Hz, Vrms_min=90Vの条件では、C2容量の最小値は

となり、9.75µF以上の容量値を用いることでちらつきを防止することができます。

尚、上記計算結果は理想値です。
実際に実装する容量値は、別途計算ファイルにて算出できます。

6-4.VDD 電源供給(R5,R6,C3,ZD1)

ICの電源端子(VDD端子)へ電源供給を行うための回路となります。電源供給の方式としては、ツェナーダイオードを用いた方式とトランス補助巻線を用いた2種類があります。トランスを使用する方式では、補助巻線を通してVDD端子へ電力供給します。これよりツェナーダイオードを用いた方式と比較し、RVDDでの損失を抑え、さらなる高効率を達成できます。

今回の例では、ツェナーダイオードを用いた方式を使用しておりますが、トランス補助巻線を使用した方式も併せて説明します。各方式の部品選定方法については、下記の通りです。

ツェナーダイオードを用いた方式

ツェナーダイオードを用いた方式のVDD電源供給回路を図26に示します。

(図26)ツェナーダイオードを用いた方式のVDD回路

ZD1

VDD端子への印加電圧を決定する、ツェナーダイオードです。
VDD最小電圧(9V) < ツェナー電圧 < VDD 最大電圧(15V)
を満たすツェナーダイオードを使用してください。
今回の例では、ツェナー電圧12Vの製品を選定しております。

CVDD

VDD端子電圧を安定化させるコンデンサです。10µF以上の容量値のコンデンサを使用してください。
また、セラミックコンデンサを使用する場合は、X7R、X6S等の周囲温度変化およびDCバイアスにて静電容量が減少しにくい製品を選定してください。

RVDD

全波整流後、平滑された電圧から、VDD端子およびZD1への電流量を決定する抵抗です。
RVDDに流れる電流は、ICの定常的な消費電流とスイッチングのための外付けパワーMOSFETのゲートチャージ用の電流となり、抵抗値を大きく設定するとVDD端子電圧が低下してしまい動作が不安定になる場合があります。
また小さく設定するとRVDDでの損失が大きくなり効率を低下させるため、適切に設定することが必要です。
今回の例では、ICの消費電流と外付けパワーMOSFETのゲートチャージ用の電流の合計が1mAと想定し、RVDD(図23のR5とR6の合計値)を66kΩに選定しております。
最適な抵抗値は入力電圧、外付けパワーMOSFETのゲート容量、コイルのインダクタンス値等に依存しており、実際に実装する抵抗値は、別途計算ファイルを参照してください。

トランスを用いた方式

トランスを使用する方式のVDD電源供給回路を図27に示します。

(図27)ツェナーダイオードを用いた方式のVDD回路

LT1

LT1の補助巻線を用いることで、VDD端子へ電流供給を行います。
トランスの選定方法については、6-6項を参照してください。

DVDD

LT1から電源電圧を供給する整流ダイオードです。DVDDには式(8)に示すようにLED電圧およびトランスの巻数比に依存した逆バイアス電圧VDvddが印加され、逆バイアス電圧を考慮した定格電圧のダイオードを選定してください。

N1 トランス1次側巻線数
NAUX トランス補助巻線数
VDD VDD端子電圧
Vrms_max 入力電圧の上限値(実効値)
Vspike スイッチングに伴うスパイク電圧(~50V)

以下に計算例を示します。
N1=150, NAUX=30, VDD=12V, Vrms_max=110V, Vspike=50Vの条件では、逆バイアス電圧VDvdd

となります。
別途、計算ファイルにも同じ計算をさせています。ご利用下さい。

CVDD

VDD端子電圧を安定化させるコンデンサです。10µF以上の容量値のコンデンサを使用してください。
また、セラミックコンデンサを使用する場合は、X7R、X6S等の周囲温度変化およびDCバイアスにて静電容量が減少しにくい製品を選定してください。

RVDD

起動時にVDD端子への電流供給を行うための抵抗です。入力電圧が印加され、VDD端子電圧がUVLO解除電圧以上になると、GATE出力が開始され通常動作に入ります。起動後はVDD端子への主な電力供給はトランスの補助巻線を通して行われます。
RVDDが大きく、RVDDを流れる電流がICで消費する電流より小さい場合、VDD端子電圧がUVLO解除電圧以上にならず起動することが出来ません。そのため、RVDDの抵抗値は式(9)を満たす抵抗値のものを選定してください。(図27)

ISTB スタンバイ電流225µA(typ.)
VUVLOR UVLO解除電圧7.5V(typ.)
Vrms_min 入力電圧の下限値(実効値)

以下に計算例を示します。
ISTB=225µA, VUVLOR=7.5V, Vrms_min=90Vの条件では、RVDD

となり、532kΩより低い抵抗値を用いることで、ICを正常に起動できます。
別途、計算ファイルにも同じ計算をさせています。ご利用下さい。

RVDD1

VDD端子への電流供給を行うため、LX_VDDを振幅させVDD端子電圧を供給しております。(図28参照)
しかしながら実際にはLX_VDDにスパイク電圧が発生することで、VDD端子電圧がVDD電圧の狙い値(=VLED×N3/N2)より高い電圧に上昇する場合があります。
その場合、VDD端子電圧の上昇対策としてRVDD1に抵抗を入れVDD端子へ供給する電流を抑制することで対策が可能となります。

(図28)トランスを用いたVDD回路の動作波形

6-5.コイル(L2)

XC9401シリーズでは外付けパワーMOSFETのオフタイムを6.0µs(typ.)に固定して、コイルのピーク電流を制御しているため、連続モードおよび非連続モードの動作モードは、全波整流後、平滑された電圧およびコイルのインダクタンス値により決定されます。

理想的にはオフタイム固定制御の連続モードでは、入力電圧変動によるLED電流の変動はありません。しかしながら、非連続モードでは、入力電圧変動によりLED電流が変動してしまいます。このため、コイルの選定は、連続モードで動作するようにコイルのインダクタンス値を選定してください。具体的な方法を下記で説明します。

まず、連続モードに入るために必要な最小インダクタンス値を式(10)より算出します。また、連続モードにおいてはインダクタンス値が大きいほうがインダクタタンスのばらつきによるLED電流のばらつきが小さくなるため、可能な限り大きいインダクタンス値を選定してください。また、インダクタンス精度の良い製品を使用すると、LED電流のばらつきを小さくすることができます。

インダクタンス値が大きすぎるとスイッチング周波数が可聴域(20~20kHz)に入ってしまう可能性があるため、スイッチング周波数が可聴域に入らないように、式(11)を満たしていることを確認してください。
インダクタンス値が決まりましたら、コイル電流に流れるピーク電流および発熱を考慮しコイルを選定してください。

VLED LED電圧
VF フライホイール・ダイオードの順方向電圧
ILED LED電流
tOFF オフタイム 6.0µs(typ.)
L コイルのインダクタンス値
ΔIL コイルの電流振幅
Vrec_min_ave 入力電圧の下限値での全波整流後、平滑された電圧の平均値
(算出が複雑なため、計算ファイルをご確認願います。)

以下に計算例を示します。
VLED=60V, VF=1.0V, ILED=0.15A, tOFF=6.0µsの条件では、インダクタンスの最小値は

となり、1.22mH以上のインダクタンス値を選定します。ここではLED電流のばらつきを小さくしたいため3.3mHのコイルを選定します。
次に選定したインダクタンス値において、スイッチング周波数が可聴域に入っているか確認します。
L=3.3mHの条件ではVrec_min_ave=120V, ΔIL=0.11Aとなるため、式(11)は

となり、スイッチング周波数が可聴域に入っていないことがわかります。
実際に実装するコイルは、別途計算ファイルを参考に選定してください。

6-6.フライホイール・ダイオード(D1)

MOSFET Q1がオフ状態の時に、インダクタンスに蓄積されたエネルギーを放出するためのフライホイール・ダイオードです。逆回復時間の短い、ファストリカバリーダイオードをご使用願います。逆回復時間の長いダイオードは効率を悪化させますので、ご注意下さい。
今回の例では、ピーク電流が180mAに達するので、定格電流0.7Aの製品を選定しました。

6-7.MOSFET、ゲート抵抗(R7)

スイッチング用のパワーMOSFETおよびスイッチング時間調整用のゲート抵抗です。

ゲート抵抗を挿入することにより、MOSFETのスイッチング時間を遅くし高周波のEMIレベルの低減を行うことが可能です。しかしながらゲート抵抗を大きくし、スイッチング速度を遅くするとMOSFETのスイッチング損失が増加するため、効率が低下します。
使用するMOSFETにより最適値が異なりますが、5~50Ωを目安にゲート抵抗を選定してください。

MOSFETの選定方法はVDD 電源供給方式により異なります。下記に選定方法を記載します。

VDD電源供給:ツェナーダイオードを用いた方式

ゲート容量が大きいMOSFETを選定すると、VDD端子へ供給するゲートチャージ用の電流量が大きくなることで、R5,R6での損失が増加し、効率が低下します。またR5,R6の損失が大きくなると、より許容損失の大きい抵抗を選定しなければならず、実装面積の増大およびコスト増加となってしまいます。

そのためゲート容量が小さいMOSFETを選定し、回路全体の効率を上げることが重要となります。
今回の例では、ゲート容量が小さいMOSFETとしてIPD60R3K3C6(Gate charge total:4.6nC@10V)を選定しております。

VDD電源供給:トランスを用いた方式

トランスを用いた場合はツェナーダイオードを用いた方式と異なり、VDD端子へトランスを通じて高効率に電源供給がされるため、ゲート容量が大きくてもオン抵抗が小さいMOSFETを使用しMOSFETの損失を低減させる方が高効率となります。
このためオン抵抗が小さいMOSFETを選定してください。

6-8.LED電流調整(R3,R4)

LED電流を調整するため、外付けパワーMOSFETを流れる電流を調整するセンス抵抗です。センス抵抗を調整することでLED電流を設定します。

今回の例で用いるCタイプでは、内部基準電圧とISEN電圧を比較しており、MOSFETを流れる電流のピーク値はセンス抵抗R3、R4により式(12)のように決定されます。(図29参照)

Ip MOSFETを流れる電流のピーク値(前述のコイル電流のピーク電流と同一)
VISEN ISEN電圧 0.3400V(typ.)

非絶縁回路での連続モードでは、MOSFETを流れる電流、コイル電流およびLED電流を図30に示します。LED電流はコイル電流の平均値となりますので、LED電流を目標の設定値に調整するためには、センス抵抗R3、R4に式(13)で算出した抵抗値を使用することで設定可能です。

VISEN ISEN電圧 0.3400V(typ.)
ILED LED電流設定値
VLED LED電圧
ILED LED電流設定値
VF フライホイール・ダイオードの順方向電圧
L コイルのインダクタンス値
tOFF オフタイム 6.0µs(typ.)

(図29)MOSFETを流れる電流とISEN電圧

(図30)MOSFET、コイル、LED電流

以下に計算例を示します。 VISEN=0.3400V , ILED=0.15A, VLED=60V, VF=1.0V, L=3.3mH, tOFF=6.0µsの条件では、センス抵抗R3、R4を

を満たす抵抗値にすることで、LED電流0.15Aに設定できます。
実際に実装する抵抗値は、回路遅延等を含んだ計算式になりますので、別途計算ファイルにて算出してください。

6-9.出力容量(C4)

LEDのリプル電流、および、リプル電圧を抑制するためのコンデンサです。
今回の例のように、全波整流後、平滑された電圧VrecがLED電圧を下回ることがない場合、ちらつきが発生しないため出力容量C4の容量値を小さくすることができます。このため、出力容量に電解コンデンサではなく、セラミックコンデンサが使用できるため、LED照明の信頼性を向上させることができます。

出力容量の容量値は、LED電流のリプル電流率によって決定されます。ここではリプル電流率0.8を目標値として容量値を決定します。

まず、ILED=150mAに対し、リプル電流率0.8(リプル電流150mA×0.8=120mA)以下に抑える場合、使用するLEDのIV特性から、許容されるVrippleを算出します。ここでは図31より0.45V×20=9.0Vとなります。

セラミックコンデンサを使用する場合、Vripple=9.0Vを達成するため出力容量の容量値は、式(14)より大きなコンデンサを選定してください。但し、セラミックコンデンサではDCバイアスおよび温度変化等により公称値より容量が低くなるため、DCバイアスおよび温度変化等を考慮した実効容量にて式(14)を満たす製品を選定してください。

(図31)LEDのIV特性

C 出力容量C4の最小実効容量値
Vripple LED電圧に許容されるリプル電圧
tON オンタイム
tOFF オフタイム 6.0µs(typ.)
ΔIL コイルの電流振幅

以下に計算例を示します。
Vripple=9.0V, tON=6.05µs, tOFF=6.0µs, ΔIL=0.11Aの条件では、出力容量C4の最小実効容量値は

となり、動作時の実効容量が0.019µF以上の容量を選定することで、リプル電流率0.8以下に抑えることができます。

別途計算ファイルにも同じ計算をさせています。ご利用下さい。
また、実際にはコンデンサのESRの影響や、LEDのIV特性が非線形であるため、実機と異なることがあります。
実機での確認の上、容量値を選定してください。

6-10.ラインレギュレーション改善回路

XC9401シリーズでは回路内部の遅延時間等により、入力電圧変動に伴いLED電流が変動する場合があります。LED電流の入力電圧変動が見られる場合、図32に示す回路にてラインレギュレーションが改善されます。

抵抗値としては、RL2両端に印加される電圧が0.1V以下になるよう抵抗値を選定してください。 また、本対策回路を使用することで、LED電流が通常の場合に比べ低くなります。このため、式(13)で算出されるセンス抵抗より低めの抵抗値を使用する必要があります。

改善の効果については、入力電圧、コイルのインダクタンス値、センス抵抗の抵抗値により効果が異なるため、計算シートおよび実機にてご確認ください。

(図32)ラインレギュレーション改善回路 

この記事で紹介した製品

XC9401

推奨品

LED 照明用オフラインコントローラ IC、A タイプは力率を考慮した回路構成で、LED 電流を入力電圧(正弦波)と同期させることにより高力率を達成します。B タイプ、C タイプは、スイッチングによる外付けパワーMOSFET に流れるピーク電流を一定にすることで、LED 電流を一定に保つことができます。

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