LDOフォールドバック フの字回路/制限電流回路

はじめに

本Tipsでは、エンジニアおよび営業担当者の知識を高めることを目的にLDOのデータシートを隅々まで調べても実際には得ることが難しいレベルの詳細について取り上げます。LDOに電流制限/電流フォールドバック回路が多様な形で内蔵されていること、またVOUT対IOUTの特性グラフを使用してLDOの出力電圧と出力電流が起動時にどのように変化するかを少なくとも部分的には予測できることを示します。この概念は、「電流制限回路 フォールドバック フの字回路の解説(XC6219)」というTipsで特定タイプのLDOについて概説されていますが、ここではその概念をさらに詳しく説明します。最後に、起動時の出力電流波形には大量の突入電流が含まれることから、トレックス・セミコンダクターの突入電流保護内蔵LDOの利点も紹介します。

制限電流回路とフォールドバック回路の分類

トレックス・セミコンダクターのLDOに内蔵されている電流制限/電流フォールドバック回路は、以下の4つの主要タイプに分けることができます。

  • A) 電流制限回路、次に電流フォールドバック回路
  • B) 電流フォールドバック回路のみ
  • C) 電流制限回路、次に電流制限回路
  • D) 電流フォールドバック回路、次に電流制限回路

上記の回路の選択順序は、LDOがイネーブルになりLDOの出力側で過剰な出力電流が要求された状況に基づいています。すなわち「タイプA」のLDOでは最初に電流制限回路が作動し、続いて電流フィードバック回路が作動することから「A) 電流制限回路、次に電流フォールドバック回路」という表現になっています。

以下の図は、これらの4タイプの回路における代表的なVOUT対IOUTの波形です。

以下の表に、主なトレックス・セミコンダクターのLDOに内蔵されている電流制限/電流フォールドバック回路のタイプを示します。

LDO series Limiter TYPE
Type A Type B Type C Type D
XC6204
XC6209
XC6210
XC6214
XC6215
XC6216
XC6217
XC6218
XC6219
XC6220
XC6221
XC6222
XC6223
XC6224
XC6227
XC6501
XC6503
XC6504
XC6505
XC6602
XC6701

この表では、旧式のトレックス・セミコンダクターのLDOの多く(XC6204、XC6219など)がタイプAに分類されていますが、これは、電流フォールドバック回路で十分な精度が得られないことから電流制限回路が追加されたためです。

その後2005年ごろ、電流フォールドバック回路のみで電流を制限できるようになりました。これにより、過電流を検出できる電流フォールドバック回路を内蔵したタイプBのトレックス・セミコンダクターのLDOが新たに提供されるようになりました。タイプA、タイプBのLDOは回路規模がタイプCおよびタイプDに比べ小さいため、より小型のPKGへ搭載が出来るメリットがあり、超小型のXC6224やXC6504はタイプAのリミッターが搭載されています。

ところが、電流フォールドバック回路を使用すると顧客のアプリケーションで初期出力電圧がわずかに負(-0.2Vまで)になる場合に、LDOを起動できなくなる可能性があります。この問題は、最初の制限回路(起動時)として電流フォールドバック回路ではなく電流制限回路を採用したLDOを使用することで回避できます。これが、タイプCのLDO(XC6223、XC6503など)が導入された理由です。また電流制限回路は制限する電流値の制御性に優れており、タイプCおよびタイプAのLDOに電流制限回路が搭載されている理由の一つです。しかし、タイプCのLDOでは、起動時の問題が解決される一方、VOUTが1V未満に降下するまで、過電流保護回路によって作動するVsub>OUTの減少が出力電流の減少を伴わず、タイプAおよびBよりも過熱しやすいことから、過電流状態の発生時に新たな問題が生じます。

タイプAおよびBのLDOで起動時に生じる問題はタイプCおよびタイプDのLDOを使用することで解決でき、タイプCのLDOでの過電流状態で発生する過熱の問題はタイプDのLDOを使用することで解決出来ます。そのため、トレックス・セミコンダクターはXC6505シリーズにおいてこのようなLDOの開発に着手しました。
また、タイプCのLDOにおいてもTSD(サーマルシャットダウン)回路を組み合わせることで、過熱による問題を解決できます。

これらのことより今後リリースされるLDOはタイプDもしくはタイプCのリミッター回路を搭載した製品が主流となります。また、この2つのリミッター回路の小型化、改良を進めることで超小型PKG搭載製品への適用も進んでいきます。

具体的ケーススタディに入る前の留意点

それでは、さまざまなLDO、具体的にはそれぞれ1種類のタイプAおよびタイプBのLDOと2種類のタイプCのLDOにおける起動時の動作について説明していきます。タイプDについては、トレックス・セミコンダクターが提供しているLDOはXC6505のみであるため、このLDOについて1つのセクションを割く必要はないと考えました。また、同じタイプでも、シリーズによって動作が異なることに注意してください。以下に示す「タイプA」のLDOに関する例ではXC6219シリーズのみを取り上げていますが、他のシリーズでは動作が異なる可能性があるため、ここで説明する例から他のシリーズの「タイプA」のLDOにおける起動時の動作について結論を引き出さないでください。同じことがタイプB、C、およびDのLDOについても言えます。いずれにしても、本Tipsは良いスタートになるものであり、トレックス・セミコンダクターのLDOの起動時の動作を調べる必要があるときにいつでも参照することができます。

以降に示す波形の多くにはLDOの出力電流IOUTが含まれているため、この出力電流がどの位置で測定されているかを以下の回路図で明確にしておきましょう。図からわかるように、電流プローブは、LDOの出力ピンVOUTと出力コンデンサCLの間に挿入しなければなりません。電流プローブをCLの後ろに挿入すると、起動時に生成される突入電流がCLによってすべて吸収されるため、重要な情報が失われてしまいます。

特に記載のない場合は、CIN=CL=1μFとし、入力電圧VINは常にLDOの安定化出力電圧より1.0V大きい値に設定されているものとします。たとえば、LDOの安定化出力電圧が3.0Vの場合、VINは4.0Vに設定されます。

ケーススタディ

1)LDOタイプA

最初の例はXC6219B302MRです。以下の3つのグラフは、XC6219BがCEピンによりイネーブルになり、出力負荷に対して3つの異なる定常電流値(20mA、80mA、150mA)を供給する必要がある場合に出力電流がどのように変化するかを示しています。
すべてのIOUT波形は、それぞれピークの値が多少異なることを除き、形状が似ています。
以下のグラフ、および以降に示すすべてのグラフでは、出力電流が可変抵抗器によって設定されていることに注意してください。

それでは、LDOがイネーブルになり、20mAを供給する必要がある場合について、起動時の波形を詳しく考察していきます。以下の特性グラフはXC6219B302MRのVOUT対IOUTの特性グラフを表しています。次頁の波形は、上の左側グラフを単純に拡大したものです。

XC6219B302

最初は、VOUTおよびIOUTはどちらも0Vです。その後、「電流制限回路 フォールドバック フの字回路の解説(XC6219)」のTipsで説明しているように、起動中、VOUTおよびIOUTは電流フォールドバック曲線に従うため、VOUTおよびIOUTの値は常に電流フォールドバック曲線上の点に一致します。これについて詳しく見ていきます。

まず、出力電流が約20mAまで上昇し始める一方、VOUTは0Vのままです。(V1, I1を参照) その後、VOUTが増加し始め、IOUTも増加しますがVOUTおよびIOUTは、常に電流フォールドバック曲線上の点の座標に一致します。(例のV2, I2を参照)
それに続き、出力電流は電流フォールドバック曲線の端に到達します。これは電流制限曲線の開始点でもあります。(V3, I3を参照) 出力電流はこれ以上増加することはほとんどありませんが、出力電圧はその設定値まで上昇します。
最終的に、VOUTが設定値に達すると(V4, I4を参照)、出力電流から突入電流成分が失われ、出力負荷で要求される定常電流値まで減少します。(V5, I5を参照) XC6219の場合、(V4, I4)から(V5, I5)までの最後のステップで出力電流に多少ノイズが生じます。

ここで、上記の動作についていくつか説明します。見方によっては、起動時にVOUT対IOUTの特性を表すフォールドバック曲線に常に沿うよう出力電流IOUTを抑制することで、電流フォールドバック回路は一種の突入保護回路のように機能します。上記の例でVOUT=V2=0.7Vの時点について考えると、突入電流のためIOUTはできる限り増加しようとしますが、フォールドバック曲線に沿うよう抑制されるため増加できず、IOUT=I2=100mAとなっています。
つまり、下記のグラフからもわかるように出力電圧が設定電圧に上昇するまでは電流フォールドバック回路に抑制された電流で突入電流は流れ、LDOが出力電圧が立ち上がった時点で、出力負荷からの要求出力電流に安定します。この例での定常出力電流は0mAです。

これまでに説明してきたように、VOUTが設定値まで上昇する間、IOUTは、すべての(VOUT, IOUT)座標がフォールドバック曲線に沿うように抑制されます。これが上記のグラフで起こっていることであり、これによって、実際の出力電流要求が0mAであるにもかかわらず、出力電流は258mAまで上昇します。ただし、電流フォールドバックがなければ、出力電流は同じ条件下でもさらに高い値でピークになるでしょう。

起動時のIOUTの波形は、電流フォールドバック回路によって決まると言えます。LDOのVOUT対IOUTの特性グラフが過電流状態時の動作を明確に表していることは、これまでに説明したとおりです。また、同じ波形を逆方向(前のVOUT対IOUTグラフの赤い矢印の方向)にたどると、電流フォールドバック回路を内蔵したXC6219BなどのLDOにおける起動時の動作も予測できることも示しました。

2)LDOタイプB

引き続き、電流フォールドバック回路のみを内蔵したXC6221A302MR(タイプB)について考察します。以下の3つのグラフは、XC6221AがCEピンによりイネーブルになり、出力負荷に対して3つの異なる定常電流値(20mA、80mA、150mA)を供給する必要がある場合に出力電流がどのように変化するかを示しています。グラフからわかるように、どの場合も、出力電流は起動時に同じパターンに従っており、起動時の短絡電流からフォールドバック回路の動作電流に沿って260mAまで線形的に上昇し、最終的に出力負荷で要求される電流値に設定されます。
この例でも、3つのすべての場合でCIN=CL= 1μFです。

それでは、前述のXC6219Bの例と同様の条件であるLDOがイネーブルになり、20mAを供給する必要がある場合のケーススタディを使用して、起動時の波形を詳しく考察していきます。
次に示す特性グラフはXC6221A302MRのVOUT対IOUTの特性グラフを表しています。その次の波形は、上の左側グラフを単純に拡大したものです。

XC6221x302

まず、電圧V1、電流I1で示された最初の赤いドットから開始します。最初に、XC6221のCEピンが“high”になるとLDOが作動し、突入電流がLDOの出力コンデンサCLに流れ込もうとします。このとき、XC6221の電流フォールドバック回路が反応してそれを30mA程度の電流に抑制します。その後、VOUTが上昇し始め、突入電流もフォールドバック曲線上の対応する値まで増加します。起動中、VOUTがV2まで上昇する一方、IOUTはI2を保ち、これより上昇したり降下したりすることはありません。

フォールドバック曲線に沿ったVOUTおよびIOUTの緩やかな増加は、VOUTが設定値(V3を参照)に達するまで続き、この時点で、出力電流はXC6221の通常動作時の電流制限値と等しくなります。(I3を参照)
その後、出力電流は要求される出力電流量(この例では20mA)まで減少します。(I4を参照)

前述のXC6219Bの例で示したとおり、電流フォールドバック回路は、フォールドバック曲線に沿うように出力電流を抑制されます。但し、XC6219Bの例でも説明した通りVOUTの上昇中、出力電流はフォールドバック曲線に沿うため、出力負荷で要求されるIOUT値に落ち着く前に、出力電流が電流制限値に達します。

本書の後のセクションでXC6223Fシリーズを取り上げる際に、このような問題を、突入電流保護のための専用回路を内蔵したLDOでいかに回避できるかを説明します。

3)LDOタイプC

次に、タイプCの2つのLDOにおける起動時の動作を説明します。ここで取り上げるLDOはXC6223FおよびXC6223Bシリーズで、これらのシリーズには内蔵の突入電流保護の有無という違いがあります。

XC6223B series

以下の3つのグラフはXC6223B301(突入電流保護なし)がCEピンによりイネーブルになり、それぞれ20mA、80mA、150mAの出力電流を供給する必要がある場合にどのように反応するかを示しています。この例でも、起動時に出力電流波形はすべて同じパターンをたどります。

ここでは、上記左側の波形を拡大したものと、XC6223B301のVOUT対IOUTの特性グラフを使用して、出力負荷に対して20mAの定常電流を供給する必要がある場合のCEピンによる起動時の動作について詳しく説明します。条件は、前述のXC6219BおよびXC6221のケーススタディと同じです。

XC6223B301

ICがCEピンによりイネーブルになると、VOUTが0.8Vに達するまで出力電流が50mAに制限されます。(V2, I2を参照)

その後、電流制限は115mAに引き上げられますが(V3, I3を参照)、その期間は数μsのみです。その後、出力電流のすべての制限が、より高いICの電流制限になるため、出力電流はこの制限に達するまで急速に増加します。(V4, I4を参照)

ここで、出力電流は、点(V3, I3)から点(V4, I4)までの間、電流フォールドバック回路を内蔵したXC6221のようにVOUT対IOUTの波形に沿うことはありません。(過電流および起動時の波形が同じ(VOUT, IOUT)曲線をたどる(ただし逆方向)のは、起動時に最初に電流フォールドック回路が作動するLDOのみです)

最後に、VOUTが3.0Vに達し、出力電流は、出力負荷で要求される定常電流値(20mA)まで減少します。(V5, I5を参照)

XC6223B301では、出力電圧が設定電圧に上昇するまでは出力負荷で要求される定常電流に関係なく、出力電流は約370mAでピークになります。この370mAのピークは、突入電流保護のための専用回路を内蔵したXC6223FなどのLDOを選択することにより低減できます。

XC6223F series

以下の3つのグラフはXC6223F301(突入電流保護内蔵)がCEピンによりイネーブルになり、それぞれ20mA、80mA、150mAの出力電流を供給する必要がある場合にどのように反応するかを示しています。起動時の出力電流ピークがいかに低減されるかをわかりやすく示すために、スケールはXC6221およびXC6223Bと同じですが、横に並べた3つのグラフでは、時間スケールを10μs/divisionから40μs/divisionに増加させています。

別の言い方をすれば、XC6223Fは、XC6221およびXC6223Bよりわずかに緩やかに上昇しますが、このように突入電流をより長い間隔に広げることで、起動全体にわたる不要な出力電流ピークが回避されます。

上の左側グラフと右側グラフでは、出力電流波形がまったく異なるため、両方のグラフを詳しく考察します。
まず、以下の拡大された波形と「VOUT対IOUT」の特性グラフを使用して、前述のXC6219B、XC6221、およびXC6223Bの詳細な例と同じ起動条件下(LDOがイネーブルになり、20mAを供給する必要がある)でのXC6223F301の動作について説明します。

以下のグラフでは、上の左側グラフで40μsだった時間スケールが10μsに減少していることに注意してください。

XC6223F301

最初に、XC6223Fがイネーブルになると、その直後に出力電流(主にその突入電流成分)が、XC6223B301で観察されたものと同様の方法で、より低い電流制限により制限されます。突入電流が約50mAに制限される一方、出力電圧は上昇し始めます。(V2, I2)
出力電圧が約0.8Vに達すると、電流制限が約115mAまで引き上げられ、タイマー遅延が経過するまでこの値を維持します。そのため、VOUTが増加し続ける一方で、出力電流は115mAを超過しないように抑制されます。(V3, I3を参照)
最終的に出力電圧は設定電圧に達し、出力電流は、出力負荷で要求される20mAの定常電流まで減少します。

ただし、これとは異なる出力電流波形になる場合もあります。このような波形は、2番目の電流制限(115mA)のタイマー遅延が経過した時点でVOUTが設定電圧まで上昇していない場合に生じます。

これを示すために、さらにXC6223F301での定常時の出力電流を150mAと大きくした例を下記に示します。出力コンデンサの値を1μFから10μFに増加させることでも同様の状態にすることは可能でしたが、これでは多くの顧客の設計が反映されませんので、LDOがイネーブルになったときに供給する必要のある定常出力電流量を150mAに増加させました。

以下のグラフと波形を参照してください。時間スケールは40μs/divisionです。

XC6223F301

最初は、前述の例と同様の波形になります。すなわち、VOUTが約0.8Vに上昇するまで、出力電流はまず約50mAに制限されます。(V2, I2)
その後、特定のタイマー遅延が経過するまで約115mAに制限され、その間に出力電圧は増加し続けます。(V3, I3を参照)
ただしこの場合は、タイマー遅延が経過した時点でもVOUTが設定電圧まで上昇していないため、出力電流は、VOUTが設定値に達するまで増加します。(V4, I4を参照)
その後、出力電流IOUTは150mAまで減少します。

XC6223Fを使用したこれらの2つの例から、このようなICにおける起動時の「VOUT対IOUT」の波形が実際には多様な波形になり得ることが明らかになりました。以下のグラフでは考え得る3つの波形を赤色、オレンジ色、黄色で示しています。黄色の波形は極端なケースで、顧客が実際には遭遇しないような条件に対応していますが(1μFの代わりに10μFの出力コンデンサを使用し、起動時の出力電流を高くしている)、あえてこのようなケースでは、XC6223Fの突入電流が150mAを上回る可能性のあることを認識してもらうためにあえて含めました。

以下のグラフからは、XC6219BやXC6221などのLDOとは異なり、XC6223FのVOUT対IOUTの特性グラフから起動時の動作を予測することがあまり実用的ではないという結論も導き出されます。

XC6223F301

結び

本Tipsでは、電流フォールドバック回路と電流制限回路の動作にスポットを当てました。これまでに示してきたように、これらの回路は多様な形で内蔵されており、それぞれに利点があります。

たとえば、電流フォールドバック回路は、過電流状態の発生時に出力電流を低減するという主目的に加え、起動時の突入電流保護を安価に実装できることから、トレックス・セミコンダクターのLDOの保護回路に広く採用されています。もちろん、適切な突入電流保護が必要な場合には電流フォールドバック回路が突入電流保護の専用回路にはかないません。ただし、専用回路には追加の回路が必要となり、LDOが起動時にわずかに低速になることがあります。

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