出力電圧保持時間
概要
出力電圧保持時間とは、電源回路等の入力部に外部から電力供給が停止した場合に「出力電圧を保持している時間」をいいます。
マイコンやRAM等のバックアップ回路も同様に電圧を保持する為の回路ですが、電圧を保持する時間により大容量コンデンサやリチウム電池などが使い分けされています。コンデンサの場合は静電容量がバックアップ時間に大きく関係しています。出力電圧保持時間とコンデンサ容量の関係について紹介します。
考え方
出力電圧を保持する為には、出力コンデンサにエネルギーが蓄えられている必要があります。しかし、出力に負荷が接続されている場合、出力コンデンサのエネルギーは常に負荷電流として放電されてしまいます。
その放電特性は、C×Rの時定数で決定され、電圧保持時間にも影響を与えています。
昇圧回路では、出力電圧保持時間が短く、かつ出力電圧が低下しても問題ない場合は出力コンデンサの静電容量を増やすのが簡単な方法です。
出力電圧低下させたくない場合は、入力コンデンサの静電容量を増やすことで対策します。
外部からの電力供給が停止しても、入力コンデンサが電力供給元となり回路が通常動作し続けるので出力電圧は低下せずにすみます。
単位時間あたりコンデンサに蓄えられるエネルギーは、次式で表すことができます。
つまり、コンデンサの印加電圧や静電容量に大きく依存している事がわかります。
計算例
下図のように入出力条件を設定します。
VIN=5.0V, VOUT=3.3V, IOUT=0.15A, η=0.8
出力電圧保持時間(t):0.07s
最初に出力電力(WOUT)を求めます。
WOUT=VOUT×IOUT
=3.3×0.15
=0.495[W]
次にWOUT=0.495[W]を保持するための入力電力(WIN)を求めます。
WIN=WOUT÷η
=0.495÷0.8
=0.61875
≒0.62[W]
この入力電力を満たす入力コンデンサ(CIN)の静電容量は次式から求める事ができます。
この式にVIN=5.0[V], WIN=0.62[W], t=0.07[s]をそれぞれ代入すると
故にCIN=30[mF]以上にすれば外部からの電力供給が0.07[s]停止しても出力電圧は保持する事が可能となります。
(注意)コンデンサの静電容量は公称値から許容差の下限値を考慮する必要があります。
回路例
*変換率は、定格負荷時の効率を100で割った値(変換率)を使用します。
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